『月曜日の失意』
これから書くのは失意を味わってみたい人のための文章である。あるいは、失意を味わった人を笑ってみたい人のための文章である。
ちょっと想像してみて欲しい。例えば、あなたに大好きな画家がいたとしよう。自分に相通じるような空気を感じることのできる画家だ。あなたは彼(彼女でもいい)の絵を見ると、自分の中で凝り固まっていたものが解き放たれるような気がするくらいなのだ。あなたは彼の画集をよく本屋で立ち読みしたりする。時々、インターネットで彼の公認サイトの絵を眺めたりする。自分の親しかった友人の妹の結婚式には思わず画集をプレゼントしてみたりもする。きちんと包装してもらってリボンもつけて。
しかし、あなたは今まで直接彼の作品を見たことがなかった。あるとき彼の作品展があなたの街からバスで二時間ほど走ったところにある街へ巡回してきたことを知る。あなたは朝早く起きて(そう彼のためだもの)、バスに揺られてその街まで行く。バスを降りて突然の大雨に曝されても、別に不快だなんて思ったりしない(そう彼が待っていてくれているからだ。)まるで恋人に会いに行く気持ちに似ているななんて思ったりする。ゆっくりと美術館へ向かう。その歩みまでも楽しむように。一瞬一瞬をいとおしむように。そうして美術館の正面に向かったとき、あなたはちょっと嫌な予感がしてくる。・・・・・・。
―あー、きっと彼の作品に失望したんだね。思い入れが強いとそういうことがよくあるよ。―
あなたは今、そう思ったのかもしれない。
いや、そうじゃないのだ。だって、・・・作品を見れなかったのだから。
入り口には貼り紙があった。
そこにはただ「本日休館日」と書かれていたのだ。
I don't mind, if you forget me,.
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