「その一瞬、その刹那」
あの人がモノレールに消えてから、小沢健二の「刹那」というタイトルの昔のシングル集アルバムを買った。ほとんどよく知った曲ばかりなのだけど、聴いてると動揺してくる。過去が現在に色と形をもってコールバックされそうになるからだ。振り返ったら、そこで大好きだった誰かさんが笑っていそうで、思わず涙が出てきそうだよ。
屋根を走る仔猫のように僕は奇跡を待っていた
夜をブラつき歩いてた
全てを開く鍵が見つかる そんな日を捜していたけど
なんて単純でバカな俺
ああ 街は深く僕らを抱く!
強い気持ち 強い愛 心をギュッとつなぐ
幾つの悲しみも残らず捧げあう
今のこの気持ちほんとだよね
このアルバム聴いてると小沢君は今も幸せなのかなって思っちゃう。幸せだったらいいなって思っちゃう。
小沢くんが胸を痛めて愛しのエリーを聴いていた♪のと同じように、僕は胸を痛めて彼の歌を聴いてたんだから。
長い階段をのぼり 生きる日々が続く
大きく深い川 君と僕は渡る
涙がこぼれては ずっと頬を伝う
冷たく強い風 君と僕は笑う
今のこの気持ちほんとだよね
たぶん、ぜんぶ、ほんとだったって思うよ、心から。
*
「2003年をふりかえって」
今年の小説ベスト
今年以上に本を読めることは当分ないように思う。
1.「透明な対象」 ウラジーミル・ナボコフ 一日に二度読み。言葉の向こうから何かがゆっくりと浮かび上がってくるという読書の喜びを知ったかな。
2.「ガラテイア2.2」 リチャード・パワーズ 人工知能の話、考えた上に泣けた。相互理解への痛いくらいの思い。
3.「パレード」 吉田修一 若手ナンバーワン。表と裏をきっちり描いた。
4.「舞踏会へ向かう三人の農夫」 リチャード・パワーズ 時空を越えて並行するストーリー、やがて全ては自分に還ってくる。
5.「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 サリンジャー 春樹訳サリンジャー。
6.「ダマセーノ・モンティロの失われた首」 タブッキ 哲学的な思考を絡めたストーリー。
7.「浪漫的な行軍の記録」 奥泉光 戦争と平和ボケした現代日本を絡めた点がおもしろい
8.「宮殿泥棒」 イーサン・ケイニン コントロールが絶妙な技巧派という感じ。
9.「マーティンドレスラーの夢」 スティーブン・ミルハウザー 全ては幻想の世界に消えていく。ミルハウザーワールド。
10.「東京湾景」 吉田修一 一挙に読める恋愛小説。
新書ベスト
1.「文化と両義性」 山口昌男 (岩波現代文庫) 思考することの楽しさを教えてくれた本
2.「人間は進歩してきたのか 「西欧近代」再考 現代文明論・上」 佐伯啓思 (PHP新書) この人は頭がきれる。思想家と歴史の流れをわかりやすく教えてくれる。
3.「意識とは何か <私>を生成する脳」 茂木健一郎 (ちくま新書) 心理学の先生にまで薦めた本。脳科学と哲学はクオリアにて融合する。
4.「メルロ=ポンティ入門」 船木亨 (ちくま新書) メルロポンティというより作者自身に興味が持てる本
5.「ケータイをもったサル 人間らしさの崩壊」 正高信男 (中公新書) 論理展開が弱いが、考えていることは一理以上ある。
6.「物理学と神」 池内了 (集英社新書) 科学史を織り込んでて面白い。
7.「戦後の思想空間」 大澤真幸 (ちくま新書) オウムの話がおもしろい
8.「プルーストを読む」 鈴木道彦 (集英社新書) プルーストはいいです。
映画ベスト
今年は突出したのがないけど無理やり順位づけ。
1.「北京ヴァイオリン」 チェン・カイコー 力技にねじ伏せられたって感じ。
2.「ハッシュ!」 橋口亮輔 二十歳の微熱で驚かされて、再び。
3.「浮き雲」 アキ・カウリスマキ カウリスマキはこれがベストかな。
4.「ボウリング・フォー・コロンバイン」 マイケル・ムーア 反米嫌米って感じだけど確かにその一面を見事に捉えている。
5.「ディナー・ラッシュ」 ボブ・ジラルディ クールでかっこよすぎ。
6.「座頭市」 北野武 dollsより後退したけど、やりますね。
7.「フィラデルフィア」 ジョナサン・デミ この映画は好き。
8.「バーバー」 コーエン兄弟 目立たないけど傑作。
9.「フリーダ」 ジュリー・テイモア 金粉が舞ってアートに覚醒するシーンとかいいです。
10.「息子の部屋」 ナンニ・モレッティ エンディングの静かな浜辺が好き。
他に、「天国の口、終りの楽園」「戦場のピアニスト」「アモーレス・ペロス」「青い夢の女」「トンネル」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「トーク・トゥー・ハー」「まぼろし」「コントラクト・キラー」etc・・・
舞台・アート ベスト
たいして観なかったかな。来年はもう少し観たいね。
1.「outspoken glass」展 北海道近代美術館 同じ展示やったらもう一度行きたい。
2.「エレファント・バニッシュ」サイモン・マクバーニー 他人の小説への捉え方の断面を観るおもしろさ。
3.「レオン・スピリアールト」展 ブリヂストン美術館 不安が感覚器を鋭くする。
4.レオポルド美術館常設 現代アートみどころ多し。
CDベスト
「PM2」 paris match
「When October Goes」 Chihiro Yamanaka Trio
「dangerously in love」 Beyonce
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