カローラUにのって…♪斜里岳敗退記('97 GW)

卒論も書いて、院に入って最初のGW。
サークルも卒部(実際は初冬から僕は卒論で活動できないまま卒部)したわけで、同期の奴らもみんな暇。
「GWにみんなでどっか行こっか?」
「いいねえ〜斜里岳Shari-dakeなんてどう?」
ねえ友達っていいものです。
それが同じテントの釜の飯を食べた友達なら。
真剣勝負で夜中まで議論したような友達ならばなおさら…。

そんなわけでGW始まる前の平日、ゼミ発表済まして、研究室ノートに「行ってきます」と逃げ書きしとけば、家(楓庵)までダッシュ。
若葉色の銀杏並木超えてく僕も解放感いっぱいです。

ザックとスキー出せば、みんながカロU乗ってやってきます。
カロUドライバーはactive girl,I子。
控えめだけど優しいKEN。
歩く百科事典こと八。
彼らとわたしの4人でいくわけです。

札幌抜けて車で8時間くらいかけて、一挙に知床の根元まで行くのです。
イタ飯の話してたら、KENが寿司屋と勘違いしてて、ちょっと笑えたな。
(なんでこんな下らないこと覚えてるんだろう(笑))
八持参のカジヒデキと小島麻由美のテープを何度も回します。
「マスカット・エンジェルって恥ずかしいよな」
「うん、恥ずかしい」
道行く町にも畑にも山にも春がやってこようとしています。
雪国は冬がながいために、春の喜びもまた大きいのです。
そんな春の喜びが町じゅうに漂っているのです。
I子の運転は相変わらず無謀もいいとこ。
スピードメーターもかわいそうな位のスピード上げてあらゆる車を抜いてきます。
スカイラインもGTS(だっけ?)も真っ青です。
慣れてくると、死んだときはそれまでだと妙な諦観を覚えます。
逆にこの緊張感がたまらないのだな〜。

やがて夕暮れがやってきて、あたりは闇に包まれます。
それでもカロUは東に向かってひた走り。
12時近くになって、麓の町に着きました。
電灯も何もないからホントによくわからないのだけど…。
適当な道端に車停めて、テント張って、もう寝ちゃいます。

普通の山行は食事係りが早く起きてご飯つくって皆を起こすわけですが、
OBは気楽なものです。
誰も起きないのです。お〜い。
テントの内張りにも光が差し込んでくるので、もぞもぞテントから這い出すと…。
わぉーーー
広々とした春色の畑の向こうに斜里岳が端正な姿でたたずんでるじゃないですか。
そして快晴。
みんな起こしてあわてて登山口に向かいます。
といっても雪に包まれたこの時期、林道からラッセル*スキーで雪に踏み跡つけてくことなんです。
みんなのんびり歌なぞ歌ってます。
ぼくも先頭きって、卒論で鈍りきった体に油差し込みます。
空気も澄み切って、体と心の底の不燃物質も全てでていきそうな感じで気持ちいいことこの上なし。
「あ〜山っていいものさ」
って心から思える。
途中から八とKENがコンパス切って、尾根をぐいぐい登っていきます。
なんだか地形図と周囲の地形が合ってないような気もしたのですが、卒論時期のブランクのせいということにしておきます。
樹林限界のタンネ*トドマツやエゾマツのような常緑樹のことの下にテント張ります。
ビールをザックからおもむろに取り出して入山を祝います。
ほてった体の中に落ちてくビールはホントにいいもの。
タンネの森を越え、雪の上を掠める春の風が頬に当たって気持ちいい。
大なべで料理作って、またビア回します。
ニンニクとショウガが鍋の中でこんがりと焼ける香りがテントに満ちています。
ぼくは戻ってきたんだ。大好きな空間に。嬉しくなっちゃいます。

翌朝はさすがにちゃんと起きます。
アイゼンをすぐ出せるようにザックの最上部にいれ、チョコレートをヤッケのポケットにいっぱい入れておきます。
空は青いのですが、風が強い。めちゃくちゃ強い。
雲が海戦の開戦の船のように、ハイスピードで空を走っていきます。
樹林限界を出て、ハイマツ群まできたところでぼくの目の前に現れたものはきりりとした岩壁。
クライマーならいざしらず、流石にそんなバベルの塔のようなとこザイルつけてハーケンうつほどの人間じゃないし、今回のコースにはそんなのなかったはずでしたから。
「えっ、なんで」
地形図を思わず見てしまいます。
そこではたと気づきました。
「尾根が一本違っている!」…場合が場合なら背筋がゾクッてなところです。
地形が違うような気がしたのも当たり前なわけだ(苦笑)
「こんなの現役の山行でやってたらアウトだよ。これは内緒だよ。」
と慰め言葉にもならない言葉吐いて、横の谷までいったん降りて、尾根を乗り換えます。
(この辺の行動はさすがOB。迅速です。)
昨日先頭にいた八とKENは微笑ましく責任をなすりあってます(笑)
「なんか変だと思ったんだ」(KEN)
「だったら早く言えよ」(八)
かわいいものです。
尾根を乗り越えたところで風はいよいよ激しくなってきました。
風雲急を告げ、頭上のカンバの枝が音を立てて折れ、降ってきます。
シド・アンド・ナンシーのごみ箱の降ってくるシーンのように美しければいいのですが、山ではこれじゃ駄目です。
特に今回行こうとしてたのは緊張強いられる急峻な尾根でしたから。
「しょうがないよ」ということで踵を返します。
タンネの森もそして林道にも、戦の跡さながら枝葉や樹そのものまで倒れていました。
残念だけど、戦に巻き込まれたら大層なことになる。
平和が一番ぜよ。ピース。
カロUまで戻って、再びドライブです。
さらば斜里よ。またくるよ。(とそのとき思ったのですがあれから行っておりませぬ。)
途中の町の畑ではあまりの風にアリゾナ砂漠のように砂嵐が吹き荒れてました。
カロUもかわいそうに砂だらけです。
正確に言えば、I子Carになった時点で既に受難は始まってるわけです。
それから北見に住み始めた同期の奴の家にとまって、みんなでギターで歌うたって、札幌まで帰ってきておしまい。

それからカジヒデキを聴くと、そのときの斜里岳のこと思い出します。
で何で敗退記なんて書いたのということになるのですが…。
もうおわかりでしょう(笑)。春先の日曜の朝なんかに思わずかけちゃうわけです。
あの頃よく、黄色のTシャツに水玉の襟シャツ羽織ってと白いチノはいて、自転車で春の風駆って、研究室いってたことまで思い出しました。
うちの研究室にはけっこう可愛い子がいたんだよ(内緒だけど)