ブナの森の沢旅と逆流苦戦川下り('95 Summer)

大学3年生の夏。
この夏からリーダースタッフとして自分で山行をつくれるのです。
ふつう夏の計画というと沢旅か川旅かという話になってしまうのですが、一応両方とも経験している僕としては沢と川をつなげてみたいという構想をもってました。
部室の隅の本棚から「日本の沢100選」みたいな本があって、そこで紹介されてるのはほとんど滝とかゴルジュ(函)なんかが連続するような難易度の高いものなんですが、そこにぼくのレベルでも行けそうな沢を発見!。
葛根田川と大深沢という東北の沢でした。
この2つの沢をつなげると岩手から県境の山を越えて秋田に抜けられることが日本地図で確認できました。
さらに米代川という川が秋田の平野部を流れていることも確認し、沢→川という大体の構想は練られたわけです。
しかしながらこの山行計画で自分がリーダーとして下級生を連れて行くのにはちと荷が重いわけです。
そこでターゲットとする先輩(今は花を扱う仕事してるので、花屋さんと呼びます)に飲み会で東北の良さを何気に切り出すわけです。
「なんか東北の沢いくと人生かわるみたいですよ。」とかなんとか調子のいいことをね。
(このへんは作戦です。(笑))
花屋さんの中で、飲み会のアルコールが東北への小さな憧れに転換し始めた、その数日後にいきなり計画をきりだすわけです。
大体の人はここでのってきます。
花屋さんも例外ではありませんでした。
あとは準備山行も含めて、楽しく楽しく計画を立てていきます。
部会で参加者を募集すると、3人の一年生がエントリーしてくれました。
一年生と山にいくって、なかなか素敵なんですよ。
何にだって感動してくれますから・・。

大きなゴムボートとパドルと大きなザックを抱えて、朝の札幌駅を出発。
期待で誰の目も輝いています。
秋田県の米代川上流の田舎町の駅舎に川下り用品をデポジットさせて頂いて、いよいよ沢上りの出発地点へ電車で向かいます。
最後はタクシーでくねくねした山道を突き進みます。

翌朝、野宿場所から林道を歩いて入渓地点にむかいます。
1年生は早くもばてています。ザックをあけさせてみると、ワインやらジュースやら隠しグッズが満載なわけです。
(沢上りは普通超軽量化が常識)
かわいいものです(笑)。
ようやく入渓。
とても明るくて美しい沢です。
北海道では沢のまわりを鬱蒼と木々が生い茂っていることが普通なのですが、東北の沢はブナのような照葉樹林であるため、日の光が川面まで遮断されることなくやってくるのです。
そうした綺麗な沢で淵を見つけてはみんなで泳ぎます。
ぼくは末端冷え性でどうも冷水が苦手なのでほどほどにしときます。
(ホントに山向きの身体してないんです。そんなこと言うから今は都会暮らしなんだけど・・。)
途中に素晴らしく大きな滝が豪快に水しぶきをあげてて楽しいものです。
滝を登るクライマーもいるのですが、こんな大きな滝は脇の藪を漕いで巻くにかぎります。
滝の上を少し進んだとこでテント張ります。
お昼寝したり、釣りしたりって感じです。ぼくは数匹釣り上げました。
(川釣りは得意ですし好きです)
川魚を焚き火で焼きつつ(焦がしつつ?)、日本酒がまわり、星が静かに瞬きます。
こういう瞬間がぼくはとてつもなく好きでありました。

朝がくればまた地下足袋をつけて、飛び石しながら沢を上っていきます。
沢をつめていくと、どんどん小さな流れになって、しまいには跨げるほどになってしまいます。
そして水源。
この沢は稜線までつめると、そこが湿生の高層湿原になっていて、黄色の花(名前忘れました)が咲いてたりします。
花屋さんは、もっと大きな湿原を期待してたようで、ちょっとがっかり顔です。
東北のいいところは、こんなところにも小さな山小屋があったりすることです。
濡れた体を乾かして眠ることができるというのは当たり前ですが幸せなことです。
山小屋から近くのピークを山道伝ってアタックしにいきます。
ほとんど散歩気分です。
頂といってもそこにはマツなんかが生えてて、そんなに眺めはよくありません。
一応木登りして、緑深い東北の山々を眺めたりします。

翌日は雨。
山小屋で静かにすごします。

ようやく晴れて意気揚揚山小屋をでます。
山道から秋田県側の沢の源頭目掛けて、藪の中突入です。
案外沢にすぐに抜けることができました。
跨げるほどの大きさなのに岩魚がたくさん泳いでます。
花屋さんが早速手づかみやってます。
どんどん下ると沢も段々開けてきます。
小さな滝や雪渓の残骸もありますが特に問題なくクリアです。
休憩時には釣りざおだしたり、淵に飛びこんだりと思いのままに過ごします。
ぼくは試しにチョロチョロと流れこむ小さな支流に入って、そこに竿先を向けたら、
ガツンという凄い当たりがきて、この沢の主じゃなかろうかという大岩魚にめぐりあうことができました。
そのまま下ると大深沢の本流にでました。
この沢は名前のとおり深い峡谷のようになっていて、川全体が大きな淵を形成していました。
ゴムボートもってきたら下れるんじゃないかと思えるほど、水がとうとうと流れていました。
相変わらず1年生ははしゃいで淵に飛びこんでます。
こうなると大学生も鼻水たらした田舎の小学生も違いはありません。
さらに沢を下って林道に上がります。
ここには素敵なことにきれいな露天風呂がありました。
(いったい誰がどういう目的でつくったのか?)
露天風呂つかりながら、飛び交う蛍の微かな光を眺めてたりするととてもいいものです。

翌日は朝から林道歩き。
途中には川を渡渉しなければならないところもあり、露天風呂は一体誰が利用してるのかさらに謎が深まります。
林道ならば1年生も威勢よく先頭きって歩きます。かわいいものです。
車道にでれば、あとはヒッチして、川下り地点に向かいます。

ボートを回収して町の遺跡公園にテント張ります。
朝になると、ラジオ体操に人が集まりだし、ぼくたちもピョンピョンとんで混じります。
そしていよいよ川下り。
この川は鮎釣りの人が多く、さらに川の水が逆流してるため苦労します。
3日間下ったわけですが、進めるのは午前中で、海風の吹いてくる午後は全く進めません。
川を下るのに全員でパドル漕いで、それでいて、逆流の力と漕ぐ力がイコールにもなったりするのだからたまったものじゃありません。
この夏、ぼくの肩は筋肉が大いにつきましたが・・。(苦笑)
しょうがないので午後は川原で読書したり、みんなでボーリングしたりします。
不思議なものでボーリング場が常に上陸地点のそばにあったりするものなんです。
さすがにボーリングの腕は簡単にはあがってくれませんでしたが・・(笑)
1年生は知らないおうちでお風呂に入ってきたりしてたみたいです。
まぁ東北はのどかなものだ。
結局、海にでるつもりだった(byランサム)でしたが、途中で切り上げて、ぼくらは青森のねぷた祭りに向かいました。
これも至極楽しかったです。
「ラッセラー、ラッセラー」って踊りましたね。
またいつか行きたいね・・・☆。おわり。